本日午前中例の「
限定ホタル観賞の夕べ」で使うコースの草刈りを皆で行いました。「今年はなにもかも遅いよね」「ホタルもまだ見てないよ」なんていう話をしながらしたのですが、本日のこの蒸し暑さ。ひょっとしたらと思い、夜、一人で様子を見に出かけました。
夜の現場は、朝と違ってちょっとコワイ。車の駐車スペースがないので、誰も通らないヤブの中の細い道を占領して置かせていただく。あえて懐中電灯を持たず歩き始める。歩き始めてすぐに「軽トラックでも切り返さないと渡れない橋」が川にかかっている。カエルの声が夜を支配。遠くの県道を走る車のヘッドライトが時折りあたりを薄明るく照らし出すのがかえって不気味。う~ん、やっぱりまだまだでないかなぁ、と思ったその時、草むらの上をふわふわと飛翔する光りを発見!(20:13)、いたいた♪ 1年ぶりに見る緑色がかった懐かしき源氏蛍が1匹、背の高い草むらの上をゆったりと点滅しながら舞いあがっては沈み、優雅に誘うように歌うように飛翔して、遠くへ消えていった。やったぁ!今年の初蛍発見だ。きっと彼はこのエリアで今年最初に羽化した蛍だ。蛍はその発生期間の早い時期にはオスの羽化が多く、後半になってメスの羽化率が高まる。一個の固体が産む卵からも、最初はオスばかりが発生し、後からメスが羽化する。不思議な傾向をしめすがこれは近親交配を避けるためだと考えられている。
従って、そのエリアで最初に飛ぶホタル達は皆オスであり、シーズンの最後まで残って飛ぶ「なごり蛍」は皆メスなのだ。メスはその人生の最後に「卵を産む」という仕事が待っているので、オスよりも長く生き残って卵を産みつけ滅んでいく。
で、今晩見たのは明らかに初ホタルのオス。彼はかわいそうに短い一生の間にきっとメスと出会えないだろう。メスはもうちょっとたたないと発生しないのだし、万一めぐり合えてもオス対メスは5対1くらいの比率なので、彼が結婚できる保障はない。いつもその季節の最初に出るホタルはまるで斥候か偵察部隊のようだ。「そろそろ出てもいいぞ」と皆に伝令を残して死んでいく。ホタルはいつみても「もののあはれ」を感ずるが、時に初蛍となごり蛍にはその感が強い。せめてその生を楽しめよ~と伝えたかったので蛍を呼ぶ歌を小さく歌ってみたが、この夜のその蛍は二度と姿を現さなかった。
帰りに「秋葉ホタル公園」に寄ってみた。ここはせっかくの「ホタル公園」だというのに何故か上の駐車場の街灯が園内に眩しく漏れる設計となっている。惜しい。ここはまだまだだろうと思いつつチェックしていると、お~、川の水面すれすれに揺れている光りがあった♪ ここでもたった1匹、状況を偵察している初蛍を発見できた(20:46) いつまで待っていても他に蛍は存在していないようだからやっぱり初蛍だ。発見できて嬉しいがどうにもあはれを誘う。おまえ寂しくないの、たった1匹でこの世に出てきて・・・と思っていると 何かがこちらを見ている気配がした。振り返ると橋の欄干にさっきまでなかったハズの白い物体が!?。スーパーのビニール袋がぶら下がっているようでもあり、赤ちゃんが座って(?)いるようでもある。むむ妖怪め、出たか、と思いつつ近寄ると、そいつはニュ~っと伸びて脚を4本出したかと思うと欄干から橋に飛び降りて、こちらの様子を伺いニタっと笑ったように見えた。白い毛の長い丸々太った猫だった。なんだこいつ、と近寄っても逃げもしない。こいつもホタル見物だったのか。おい、良かったな蛍君、今晩お前は私と猫に見られたぞ、と振り返れば蛍はもういない。前を向けば猫もいない。静かな公園に街灯の明りが急に煌々と降ってきた。化かされたような初蛍の夜。少し不思議な時間だった。しかし、いよいよここ長坂に蛍の季節はやってきたのだ。
今、角川書店の合本俳句歳時記を調べたら今晩の状況にぴったりの句が詠まれていてびっくり。
「初蛍 かなしきまでに 光るなり」-宋淵
「蛍よぶ 昔も今も 同じ唄」-立子
「髪長き 蛍もあらむ 夜はふけぬ」-鏡花